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ニュースリリース

2013年7月19日


新開発の光学設計で最新の国際整合防爆指針に適合

赤外線サーモグラフィカメラで
耐圧防爆構造(※1)の最新検定規格に適合

〜防爆エリアでの設備状態監視や生産ラインでの品質管理に〜

  • 1 爆発性ガスが電気機器の容器内に侵入して内部で爆発しても、容器が爆発圧力に耐え、かつ、外部の爆発性ガスに引火するおそれのない構造

防爆カメラケースの外観イメージ/プラント配管の発熱画像例

 日本アビオニクス株式会社(本社:東京都品川区、社長:秋津 勝彦)は、防爆機器のリーディングカンパニーであるIDEC株式会社(本社:大阪市淀川区、社長:舩木 俊之)と共同で赤外線サーモグラフィカメラ(以下、サーモカメラ)の防爆構造を開発し、最新の検定規格に合格しました。本技術の製品化により、当社従来品と比較して防爆性能の向上、筺体の共通化、小型・軽量化、低価格化のすべてを同時に実現することが可能となります。

 従来、防爆エリアにサーモカメラを設置する場合は、大型の内圧防爆構造(※2)のハウジングの内部にサーモカメラを収納し設置していました。そのため、ハウジングの大きさから設置場所が制限されたり、その重量から保守作業が非常に困難であったりしました。また、このようなハウジングはカメラやオプションレンズの大きさに合わせて特注で製作されており、防爆検定費用を含めたその価格の高さが普及の妨げとなっていました。

 このたび開発した耐圧防爆カメラケースは、各種危険ガスに加え水素ガス雰囲気でも使用可能な防爆性能(ExdⅡB+H2T6)を有しながら、従来の内圧方式に比べて体積で約20分の1となる国内最小クラスの小型化・軽量化を実現しました。これにより、設置スペースが狭い生産ラインなどへの設置ができるようになり、メンテナンス作業も大幅に軽減されます。また、新開発の光学設計(特許出願中)により、レンズ開口部を大幅に小型化することで、窓材の前に金網等を設置することなく最新の「国際整合防爆指針」(2008Ex) (※3)に適合しました。さらに、ケースの外側に取り付け可能なオプションレンズの開発により、オプションレンズ使用時でも筐体はそのまま使用できるので、低価格が可能となりました。

 当社は本技術を活用した防爆型サーモカメラの製品化により、防爆エリアにおける設備の状態監視による重大事故の防止や、FAラインでの品質管理など、新たな領域での社会貢献を目指してまいります。

  • 2 容器の内部に保護気体(清浄な空気又は、不活性ガス)圧入して内圧を保持することによって爆発性ガスが侵入するのを防止した構造
  • 3 独立行政法人労働安全衛生研究所が労働安全衛生総合研究所技術指針として定めた「工場電気設備防爆指針(国際規格に整合した技術指針2008)」

技術開発の社会的背景

 近年、老朽化や複雑化が進んだ発電所や工場などで危険物施設における重大な事故が増加しており(図1参照)、設備の異常状態をモニタリングするための状態監視システムの構築が求められています。
 中でも、化学工場では生産に必要なガスや原材料などの様々な化学物質のほか、劣化ウランといった危険物質を大量に扱う工場もあり、ひとたび事故が発生すれば設備の損害や製品の出荷停止に関する損失だけでなく、産業界の生産・製品供給にも影響を与えます。さらには、運転に従事する従業員ばかりか、周辺の環境や住民にまで被害が及ぶ恐れがあるため、これらの事故を未然に防ぐための取り組みが必要となっています。
 化学工場での爆発事故は異常反応や暴走反応によるものが多く、設備の不具合や誤作動などによる初期段階の事故に加え、オペレーションミスなどが重なると炉内等で化学物質の異常反応が急速に進行し、急激な温度や圧力の上昇につながって爆発に至るといわれています。2013年度の消防白書によれば、危険物施設における流出事故発生原因で最も多いものは「設備の腐食劣化」で、36.1%となっており(図2参照)、その他、配電盤内の端子接触不良による出火やモーター類の温度変化による接触不良の発生などが挙げられます。
 このような事故を未然に防ぐためには、まずは日常の設備点検や保全作業が必要といわれております。しかし、点検や保全作業が十分に行われていても、複雑な設備・機器の故障や誤動作などの不具合を皆無にすることは難しいため、異常事態の発生に備えて設備の温度や圧力の変化を常にモニタリングして異常を早期発見し、適切な処置につなげることが重要です。
 サーモカメラは、広範囲の温度情報を非接触でリアルタイムに映像化できるため、日常の設備点検の強化や異常を早期に発見する状態監視の実現に役立つ、非常に重要なツールとなります。
 しかしながら、可燃性ガスや化学物質を扱う工場などの危険場所にサーモカメラを設置するには、国で定められた厳しい防爆基準をクリアすることが義務付けられています。また、生産現場で品質管理などのモニタリングを行うサーモカメラにも、防爆対応と同時に液体や粉塵などが飛び交う厳しい環境条件で動作する耐環境性が求められています。さらに、このような環境で使用できるサーモカメラが普及するためには、小型化や低価格化が課題となっています。

危険物施設における火災及び流出事故発生件数の推移
図1:危険物施設における火災及び流出事故発生件数の推移(2013年度 消防白書より出典)

危険物施設における流出事故発生原因
図2:危険物施設における流出事故発生原因(2013年度 消防白書より出典)

開発した技術の概要

1)耐圧防爆構造の小型・軽量カメラケース

  • 国際整合防爆指針(2008Ex)に適合(検定合格番号:第 TC20374号)
  • 従来方式の内圧防爆構造と比較して約20分の1の体積(国内最小クラス)
  • 大幅な小型化により、設置スペースが狭い生産ラインなどへの設置も可能
  • 内圧から耐圧防爆構造にすることで、ランニングコストやメンテナンス費を大幅削減
  • 各種危険ガスに加え、水素ガス雰囲気でも使用可能(防爆性能:ExdⅡB+H2T6)
  • IP65の防塵・防水性能により、粉塵や液体が飛び交う環境でも使用可能
  • アルミニウム合金鋳物を使用し、5kg台まで軽量化を実現
  • 屋外用フードの取付けが可能

2)金網を使用せずに耐圧防爆構造を実現するための光学設計(特許出願中)

  • 既存ピクセルサイズの320×240画素センサーで、φ25mm(鋼球落下試験基準)以下のレンズ開口部径を実現
  • 窓材の前に赤外線を減衰させる金網を取り付ける必要が無いため、鮮明な熱画像を得ることが可能
  • 窓材のある筺体前面を開けずにフォーカスリングを回転させられる構造により、簡単で精度の高いフォーカス合わせを実現

3)窓材の外側に取り付けられるオプション視野拡大レンズ

  • オプションレンズをケースの外側に取り付けることで、ケースの取替えが不要
  • 視野拡大レンズにより、設置スペースが狭い場合でも広い視野を確保することが可能

4)スマートなシステム構築を実現するインターフェイス

  • PoEにより、LANケーブルから電源を取ることが可能(専用のDC電源が不要)
  • ONVIF準拠により、ONVIF対応のIPネットワークシステムに接続することが可能

防爆カメラケースの外観イメージ
写真3:防爆カメラケースの外観イメージ

本技術を活用して製品化を目指す防爆型サーモカメラの仕様(目標値)

1)基本性能

・検出器 高感度非冷却赤外線センサー(国産)
・測定画素数 320×240画素
・検出波長 8〜14μm
・フレームタイム 60Hz
・温度測定範囲 -40 〜+500℃
・測定精度 ±2℃または読み値の±2%のいずれか大きいほう
・測定視野角 水平(H)30°×垂直(V)23°
水平(H)60°×垂直(V)46°(コンバージョンレンズによる)
水平(H)90°×垂直(V)73°(コンバージョンレンズによる)

2)構造・耐環境性

・耐圧ケース材質 アルミニウム合金鋳物
・耐圧防爆構造 ExdⅡB + H2T6 (ⅡB + 水素対応)
・防塵防水性能 IP65 (IEC60529) JIS0920防噴流形
・使用環境温度 -20 〜+50℃
・外形寸法 Φ114mm × D248mm
・質量 約5.5kg

3)電源・インターフェイス

・インターフェイス Ethernet、RS-232C、RS-485(排他使用)
・画像出力 ONVIF準拠デジタル、NTSCアナログ、RAWデジタル(温度解析用)
・電源 DC12V または PoE

想定されるアプリケーション

  • プラント設備や発電所での発火監視や設備の状態監視
  • 化学製品や塗装ライン等でのプロセスコントロールや品質管理

本件に関するお問い合わせ先

赤外・計測事業部 営業部営業推進グループ 木村、遠藤
〒141-0031 東京都品川区西五反田8-1-5 五反田光和ビル
TEL:03-5436-1371
E-mail: product-irc@ml.avio.co.jp

※本リリースに掲載されている内容は、発表時のものです。
商品の販売終了や組織の変更により、お問い合わせ先など最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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