高周波誘導加熱の原理
基礎原理から応用、メリット、デメリットまで。
高周波誘導加熱とは
高周波誘導加熱は、電磁誘導を利用して物体が自己発熱する方法であり、高周波誘導加熱、または電磁誘導加熱とも呼ばれています。
この加熱法は、被加熱物が導電体であることが条件です。
以下にその詳細な説明をします。
参考情報
誘導加熱の原理
金属体を配置したコイルに交番電流を流し、コイル内を流れる電流が磁界を発生させます。この磁界により誘導損失(ヒステリシス損)が発生し、結果として熱が発生します。
また、交番電流によって変化する磁場では、電磁誘導によって渦状の電流(渦電流)が生じます。この渦電流によりジュール熱が発生し、電磁エネルギーの熱損失(渦電流損)が起こります。
高周波誘導加熱装置は、ヒステリシス損と渦電流損の両方の加熱原理を活用して物体を加熱します。
誘導損失(ヒステリシス損)とは
高周波誘導加熱装置は、コイルに交番電流を流すことで磁界を生成します。この磁界はコイル内部やその周辺に存在し、時間とともに変化します。
ヒステリシス損は、金属材料(特に磁性体)が外部磁界の変化に応じて磁化し、その過程でエネルギー損失が生じる現象です。
金属が磁化される際、磁気ドメイン(微小な磁気領域)が再配列され、この過程でエネルギーが発熱として失われます(ヒステリシス損失)。
表皮効果と加熱効率
円筒形状に巻いたコイルの中に被加熱物を設置し交番電流を流すと、直角方向に交番磁束が発生します。
交番の周波数が高いほど、金属表面に渦電流が発生し、そのジュール熱で金属が急速に加熱されます。この現象を表皮効果と呼びます。
渦電流は金属の表面に近いほど強く、内部に入るほど弱くなります。この表皮効果により、金属表面の加熱が効率的に行われます。
金属の加熱
このようにして発生したヒステリシス損(磁気エネルギーの損失による熱)とジュール熱(過電流による熱)が合わさり、金属が効果的に加熱されます。
用途と応用
高周波誘導加熱装置は、様々な分野で使用されています。
例えば、樹脂部品への金属ナット圧入や金属の焼き嵌めなどに利用されています。また電磁調理器(IHクッキングヒーター)もこの原理が応用されており、品質や生産性の向上、ガスを使用しないことでの作業環境の改善やクリーン性や安全性など、多くのメリットを提供しています。
メリットとデメリット
高周波誘導加熱装置は、ヒートブロックやガスバーナー方式と比較して、多くのメリットを提供できますが、一方でデメリットも存在します。
メリット | デメリット |
---|---|
非接触加熱が可能です。 | 高周波誘導加熱装置は、他の加熱方法に比べて初期投資が高くなることがあります。 |
高周波による誘導加熱は、被加熱物の内部から直接熱を発生させるため、非常に効率的です。 | 装置の操作やメンテナンスには、専門的な知識が必要となる場合があります。 |
比較的温度制御が容易であり、一定の加熱条件を維持することが可能です。 | すべての材料が誘導加熱に適しているわけではなく、事前の確認が必要になります。 |
高周波誘導加熱では、物体全体が均等に加熱されるため、品質の一貫性が保たれます。 |
将来性
高周波誘導加熱装置は、その効率性、精度、環境への配慮から、エレクトロニクス分野の筐体製造を始めとする、自動車やバイク、船舶製造の現場で重要な技術として位置づけられています。
この技術は、現代社会における持続可能な製造手法の一つとして貢献をしています。
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